東芝の2016年度第3四半期の決算が、監査法人からの適正意見なしで関東財務局へ提出され、発表されました。2月と3月の2度にわたって決算発表が延期され、東芝と監査法人の調整が続いてきましたが、本日、とうとう監査法人からの適正意見のないまま、東芝が決算発表を行うに至りました。これにより、東芝の上場廃止の可能性が一段と高まりました。
東芝の監査法人
東芝の監査は、長らく新日本有限責任監査法人が担当していました。しかし、東芝の不正会計を見逃したということで2015年12月に行政処分を受け、課徴金21億円、3か月の新規業務の引き受け停止となりました。これを受けて、東芝は2016年度から監査法人をPwCあらた有限責任監査法人へ変更しました。
監査法人の限界
監査法人にとって会社はクライアント(お客様)
上場企業の場合、会社の決算書は社内で作成され、これを監査法人がチェックをします。そして、会社の作成した決算書に問題がなければ、監査法人は「適正」との監査意見を出します。
ここで、難しいのが会社と監査法人との関係です。会社側としては、「多めに利益を出したい」、「損失は少なめにしたい」ものです。一方、監査法人としては、投資家が判断を誤ることのないよう、会社が恣意的な決算書を作るべく監査しなければなりません。しかし、監査法人を選ぶのは会社側ですし、報酬を支払うのもやはり会社です。監査法人が期待されている役割を果たしつつも、お客様である会社側からも選ばれなければなりません。
監査法人とは、会社の「多めに利益を出したい」、「損失は少なめにしたい」という部分にブレーキをかける存在です。会社側から煙たがられることも少なくありません。だからこそ、同じ担当者が継続して担当することにより、クライアントと良好な関係を築いたり、監査手続きをスムーズに進めたりといったところで、顧客満足度を高めなければならないのでしょう。
監査法人には強制調査権はない
監査法人は公認会計士という国家資格に基づいて仕事をしていますが、あくまでも民間です。国家権力ではありませんから、決算の根拠資料は会社にお願いして提供を受けることになります。あくまでも任意提出ですから、会社が出したくない資料は提供しないことも可能です。会社の経営陣が経理部長に粉飾を指示したということがあったとしても、そのメールを監査法人が入手するのは不可能です。
PwCあらた有限責任監査法人の勇気
監査先から報酬をもらっている、強制調査権はないといた立場である以上、監査には限界があります。監査で「適正意見」を出さないということは、そのクライアントを失う可能性があります。
それでもなお、PwCあらた監査法人が適正意見を出さなかったというのは、評価されるべきことと思います。
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
会計監査は苦労の多い仕事だと思います。税理士法人に在籍していた時、監査法人出身の会計士の方が言っていました。
「頑張って仕事をして会社側へ指摘をすると嫌な顔をされる。頑張って仕事をしてもお客様に感謝されない。」
会社側からは頑張ると感謝されない、そして、目に見えない一般の投資家からは適正な監査を求める厳しい目。非常にストレスの多い大変な仕事だと思います。
【昨日の一日一新】
ストアカで新規講座を開設。開催日程は明日、決定する予定です。
------------------------------
※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。
また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。
------------------------------