外国法人の平成28年4月1日以後に開始する事業年度について、確定申告で提出する書類が変更になりました。
それまでは内国法人(日本企業)と同じだったのですが、外国法人特有の別表を用いることになります。
外国法人の多くは12月決算ですので、平成29年12月期の確定申告から提出する書類が変更になる法人が多いようです。
外国法人が確定申告で提出する書類の変更点
法人税
法人税の確定申告で納付税額を記載するのが別表1です。
普通法人であれば、下図の別表1(1)を使用します。
1年決算の外国法人であれば、平成28年12月期までは内国法人と同じくこの別表1(1)を提出していました。
しかし、平成29年12月期からは、以下の別表1の3を使用することになります。
こちらの別表1の3と別表1(1)の違いは、以下の通りです。
- 「恒久的施設の有無及びその種類」の欄がある
- 法人税額の計算が「恒久的施設帰属所得」と「その他の国内源泉所得」の2つに分かれている
「恒久的施設」という用語は、一般的に、「PE」(Permanent Establishment)と略称されており、次の3つの種類に区分されています。
(1) 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所。ただし、資産を購入したり、保管したり、事業遂行のための補助的活動をしたりする用途のみに使われる場所は含みません。
(2) 建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。
(3) 非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等(代理人等が、その事業に係る業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等を除きます。)。
(国税庁ホームページより引用)
平たく言うと、事業の拠点が日本にある場合、その事業の拠点を恒久的施設(PE)といい、PEがある場合には、内国法人や居住者と同様に、日本で課税が行われることになります。
そして、その恒久的施設に紐づく所得を恒久的施設帰属所得といい、それ以外の国内源泉所得と区別して課税が行われます。
地方税(道府県民税、市町村民税及び事業税)
地方税の取り扱いについても、法人税と同様、平成28年4月1日以後開始事業年度については、提出書類に変更があります。
外国法人の場合には、道府県民税及び事業税の確定申告については、次の別表の提出が必要になります。
- 第6号様式別表1の2
- 第6号様式別表5
第6号様式別表1の2の様式は、下図の通りです(東京都の場合)。
法人税で別表1の3を使用することになったのと連動して、こちらは変更になったといえるでしょう。
市町村民税でも同様の変更があり、外国法人については第20号様式別表1の2の提出が必要になります。
様式は第6号様式別表1の2とほぼ同じです。
外国法人の法人税の確定申告が行える税務ソフト・行えない税務ソフト
外国法人特有の別表が必要とのことで問題となってくるのが、法人税の申告ソフトがその別表に対応しているかどうかということです。
税務申告ソフトのホームページをもとに対応しているかどうか調査してみました(2018年2月21日現在)。
外国法人の税務申告ができない税務ソフト
下記の税務申告ソフトでは、残念ながら別表1の3には対応していませんでした。
- 魔法陣((株)ハンド)
- JDL IBEX クラウド組曲Major((株)日本デジタル研究所)
- 法人税顧問(セイコーエプソン(株))
- 申告奉行((株)オービックビジネスコンサルタント)
- PCA法人税(ピー・シー・エー(株))
- 申告freee((株)freee)
- 全力法人税(ジャパンネクス(株))
- フリーウェイ税務((株)フリーウェイジャパン)
- 税理士いらず((有)アイソフト)
他にもあるのでしょうが、これだけ並べていえることは、ほとんどの税務申告ソフトは外国法人に対応していないということです。
私が過去在籍していたBig4系の税理士法人では、当時、魔法陣を使っていました。
外国法人のクライアントも多く抱えていましたが、魔法陣で問題なく申告を行うことができていました。
こういう状況ですから、きっと今では魔法陣は使っていないのかもしれません(私も最近の事情は知らない・・・)。
私が独立してから検討の上、導入を決めたのがJDL IBEX クラウド組曲Majorでした。
しかし、外国法人のクライアントを抱える私にとっては、残念ながら外国法人に対応していない税務申告ソフトでは仕事が回りません。
やむを得ず、法人税申告ソフトを変更することにしました。
外国法人の税務申告ができる税務ソフト
これに対して、下記の税務申告ソフトでは別表1の3に対応しており、外国法人の税務申告が可能です。
- 法人税の達人((株)NTTデータ)
- 法人税全表(パーソナルメディア(株))
他にもあるかもしれませんが、私がこの小一時間検索した限りでは、この2つのみでした。
やはりお勧めは法人税の達人ということになるでしょう。
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【編集後記】
今週の税務通信の記事で気になったのは、「電話加入権の自動解約に留意」という記事。
私自身、電話加入権を購入したことがないので、税理士としてクライアントのBSに電話加入権が計上されていたり、
減損された電話加入権が税務上評価損を否認して別表5(1)に残っているのを目にしたのをみて、
「実質的に価値を失っているのに損金にできない残念な資産だ・・・」
と思っていたのだが、利用休止の申し出をしてから10年経過すると自動解約になっているとのこと。
すると、電話加入権の除却損が可能になるではないか!
しかし、残念なのが自動解約についてはNTT東日本からは連絡がこないので、自動解約になっている事実に気付かない契約者がいるということ。
これは、かなりの数の気付かない人がいるのではないか?
私は気付く自信がない。まあ、電話加入権を持っていないので関係ないが。
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また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。
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