法人税では、資本金1億円以下の企業を中小企業者としているため、数十億円という利益を稼ぎ出す大きい会社でも、中小企業向けの減税の恩恵を受けることが出来ます。本日(2016年12月5日)の日本経済新聞の記事によると、所得が15億円を超える中小企業は、研究開発減税の上乗せ措置、年800万円以下の所得に対する軽減税率、中小企業限定の投資減税などの政策減税の適用を受けられなくなるとのことです。
税法上の中小企業とは?
税法では資本金1億円以下が中小企業
制度ごとに若干の違いはあるものの、基本的には、法人税では資本金1億円以下の法人を中小企業者としていると考えておけばよいでしょう。そして、その中小企業者に対しては、恒久的な制度としての減税制度と適用期限を2年、3年というように限定した租税特別措置法による政策減税があります。
<恒久的な制度としての減税>
- 赤字企業に対しても課税を行う外形標準課税の適用対象外
(大企業の場合、資本、給与、支払賃借料、支払利息の規模に応じて事業税が課税)- 繰越欠損金の控除限度額が所得の100%
(大企業の場合、年度により80%、65%、60%、55%、50%という制限がある)
<政策減税>
- 研究開発減税の上乗せ措置
(大企業の場合、売上に占める試験研究費の割合(試験研究費割合)に応じて最大で試験研究費の10%の減税となるが、中小企業の場合、試験研究費割合とは関係なく、試験研究費の12%の減税となる)- 所得800万円以下に対して15%の軽減税率(※)
- 中小企業者向けの投資促進税制
※ 本来的には恒久的な制度としての減税ですが、現在、その減税幅が政策減税により拡大しています。
2017年度税制改正で制限される中小企業向け政策減税は?
本日の日本経済新聞の報道によると、政策減税についてのみ、所得15億円超の中小企業者の適用が制限されるとのことです。新聞報道で例示されていたのは、上記の通りです。
上記以外でも下記の政策減税については、利用頻度の高いものであり、与党税制改改正大綱の発表で確認が必要でしょう。
- 年800万円までの交際費について損金算入できる特例
- 30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例
なお、恒久的な制度としての減税については、今回の制限対象にはならないとのことです。
実質大企業が税法上の中小企業になる方法
ところで、なぜ大企業並みの所得のある法人が税法上の中小企業者となってしまうのでしょうか。大企業が中小企業となる方法は、次の通りです。
資本金を減らす(減資)
会社法上、出資をする場合には、その出資額の半分以上を資本金とする必要があります。例えば、2億円の出資をする場合、1億円以上を資本金とし、残りの金額を資本準備金とします。
しかし、資本金を減らす場合にはそのような制限はありません。130億円の資本金があっても、その資本金を1億円にして残りの129億円を資本準備金やその他資本剰余金などにすることが可能です。赤字企業の場合には、減らした資本金でマイナスとなっている利益剰余金の穴埋めをする欠損填補ということもできます。
手続きの流れは、下記の通りです。
株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上による決議)※
↓
債権者保護手続(官報公告、個別催告)
↓…1月以上
減資効力発生&登記
※ 定時株主総会による欠損填補の場合、普通決議(過半数による決議)
2015年秋には、吉本興業が資本金を125億円から1億円に減資したという事例があります。シャープも資本金を1億円にしようという動きがありましたが、批判が多かったため、撤回しました。
中小企業を存続会社、大企業を消滅会社として合併
これはメジャーな方法ではありませんが、資本金1億円の企業を存続会社、資本金130億円の会社を消滅会社として合併するという方法で資本金を減らすことも可能です。資本金1億円の企業は、資本金130億円を資本金として引き継ぐ必要はなく、資本金は1億円のままでよいのです。
こういった合併の場合、実態としては130億円の企業が合併後の主導権を握ることが想定され、逆さ合併と呼ばれます。
まとめ
上記では詳細は触れませんでしたが、政策減税については、資本金が1億円以下であっても従業員1,000人以下の会社には減税を適用しないなどの制限を設けています。ただ、資本金の規模がある程度調整可能なものである以上、資本金の金額のみで大企業か中小企業かと区別するというのは無理があり、そこで今回の税制改正が予定されることとなったのでしょう。
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【編集後記】
最近、知り合いの知り合いは知り合いということがよくあるなぁと思っていたのですが、先週の金曜日は、知り合いの知り合いが私がよく読んでいるブロガーだったということが発生!
【週末の一日一新】
5th Cafe Udagawa
FPの交流会に参加
次女の遅めの七五三祝い
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