【2016年度税制改正】スキャナ保存制度は小規模企業にとって使いやすいのか?

平成28年度税制改正
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2016年度税制改正により、スキャナ保存制度が改正されました。改正点は、下記の通りです。

  • スキャナについて、「『原稿代と一体型』に限る」要件を廃止
  • 領収書等の受領者等が読み取る場合の要件を整備
  • 小規模企業者の特例を創設

2016年度税制改正前後を比較すると、下記の通りとなります。

2017-01-25

出典:『平成28年度経済産業関係 税制改正について』(平成27年12月、経済産業省)

注目したいのは、やはり、小規模企業者の特例です。小規模企業者がスキャナ保存できるようにとのことで設けられましたが、実際のところ、使い勝手は良いのでしょうか。

小規模企業者の特例とは?

スキャナ保存制度を活用するのに必要な適正事務処理要件

スキャナ保存制度を活用するためには、その書類の保存をする会社は、下記の3つについて、社内規定を整備し、これに基づいて事務処理を行うことが必要になります。

  • 相互けんせい
    「各事務について、それぞれ別の者が行う体制」ということで、領収書を受領してスキャンする人と、記録内容を確認する人の最低2人は必要。
  • 定期的な検査
    事務担当者間でチェックする仕組み。最低限、年に1回以上の検査が必要。
  • 再発防止策
    事務処理に不備がある場合、報告、原因究明及び改善のための方策の検討を行う体制

特に、「相互けんせい」や「定期的な検査」は、複数人数が必要なので、従業員なしで一人社長として会社を経営している人など、小規模企業には難しいという現状がありました。

2016年度税制改正により小規模事業者の適正事務処理要件が緩和

そこで、2016年度(平成28年度)税制改正により、税理士が「定期的な検査」を行っている場合には、「相互けんせい」の要件は満たさなくてもよいことになりました。

そのため、ひとり会社でも、顧問税理士に定期的にチェックをしてもらえば、スキャナ保存制度を活用することが可能になります。

ちなみに、小規模企業とは、従業員20人(商業又はサービス業をメインとしている会社については、5人)以下の事業者とされています。

導入のハードル

税制改正によりスキャナ保存の要件は緩和されましたが、まだまだ導入のハードルは高いという印象がぬぐえません。

適正事務処理要件の社内規定の整備

上記で述べたように、適正事務処理要件が緩和されて使い勝手がよくなったのですが、やはり、その適正事務処理要件を社内規定として整備しなければなりませんので、手間暇がかかって面倒くさそうです。

スキャナ保存の処理方法の整備とその徹底

下図は、国税庁ホームページに掲載されているスキャナ保存の要件です。

2017-01-26

※ 出典:国税庁HP『電子帳簿保存法Q&A 問13

これを見るだけで、何かげっそりしそうです。軽い気持ちでスキャナ保存を始めて見たけど、実は保存の要件を満たしていなかったということで経費が否認されてしまったら…、そんなことを想像すると怖くて導入できませんよね。

ソフト導入のコスト

スキャナ保存をするためには、タイムスタンプを押すことができるなど、会計ソフトでの対応が必要になります。そのため、会計ソフト代が少し割高になります。

Freeeの場合、下記の通りとなります。

 電子帳簿なし電子帳簿あり
Freee
(個人事業主)
スタンダードプラン
19,800円/年(税抜)
プレミアムプラン
39,800円/年(税抜)
Freee
(法人)
ライト
1,980円/月(税抜)
ビジネス
3,980円/月(税抜)

年額にすると、20,000円プラス消費税程度の違いです。

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時間のコスト

一番のデメリットは、これではないかと思います。

現状では、スキャンの技術がそれほど高くなく、スキャンしたのちに必ずと言っていいほど、データの補正が必要になってしまいます。

そもそも、スキャンするにしても、領収書の大きさがバラバラで、一枚ずつ丁寧にスキャナーに取り込まなくてはいけませんし、スマホで写真を撮るのも、光の加減やカメラと領収書を垂直に保つように心掛けるなどの手間がかかります。

それに対して、紙での保存であれば、領収書を台紙に貼って、記載内容をソフトに打ち込むだけです。

スキャンしてデータを読み込んでデータを補正するよりも、領収書の内容を打ち込んで、これを台紙に貼って保存するほうが遥かに早いです。

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まとめ

領収書などの紙での保存がなくなることで、一見楽に思えるスキャナ保存制度ですが、現状ではお金の面でも時間の面でも紙での保存に軍配が上がる状況です。特に、小規模事業者にとっては、少しでもお金や時間を捻出したいはずなのに、スキャナ保存でお金も時間もますます失われてしまうというのが現状でしょう。

ただ、いつか技術の進歩や法整備でスキャナ保存のほうが紙での保存よりも便利になる時代が来るかもしれません。その時に備えて、スキャナ保存制度の動向や会計ソフト会社のソフトの開発状況については、注視しておくとよいでしょう。

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【編集後記】

昨日は、新規のお客様に会計Freeeを導入。インターネットバンキングやモバイルSuicaを積極的に活用しているお客様のため、クラウド会計との相性が良さそうです。

【昨日の一日一新】

南青山ブライトスクエア

スキャナ保存制度の勉強

フグの卵を食す

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また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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