本日(2018年12月14日)、与党税制改正大綱が発表されました。
法人税に関しては、例年に比べると、改正内容が小ぶりな印象です(私、個人としては)。
法人税以外にも下記のような気になるところがありました。
- 住宅ローン減税の拡大
- 東京オリンピックでの報酬
- ウイスキーの値段が上がる?
- 外国弁護士が税理士業務が可能に
私の個人的な感想を交えつつ、2019年度与党税制改正大綱の概要をご紹介します。
所得税の改正内容
住宅ローン減税の拡充
消費税10%への増税(2019年10月1日~)対策として、住宅ローン減税が拡充されます。
現行では住宅ローン減税を受けることができるのは10年間ですが、消費税増税後に取得した住宅(消費税率10%が適用されるものに限ります)については、13年間控除を受けることができるようになります。
なお、11年目~13年目の住宅ローン控除については、消費税増税分(2%引き上げ分)が上限となります。
ついでに我が家の住宅ローン減税も3年間多く受けられるようになればうれしかったのですが。
個人事業者の事業承継に対する支援
2018年度税制改正の法人の事業承継税制により、法人の事業承継について納税猶予が拡大されました。
これが個人事業主にも導入されることになります。
ただ、個人的には、「相続税・贈与税のかかる規模であれば、なぜ法人化していないの?」という疑問が…。
空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例の見直し
空き家対策の一環として、2016年4月から空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例が導入されました。
ただ、この制度、導入したはいいものの、被相続人が相続直前に老人ホームに入居していた場合には適用が受けられなかったため、使いづらい制度となっていました。
この制度が2019年12月31日に期限を迎えることから、その適用期限を4年間延長するとともに、被相続人が相続直前に老人ホームに入居していた場合でも適用を受けることができるようになります。
この改正は、2019年4月1日以後の譲渡について適用されます。
空き家に係る譲渡所得の3000万円特別控除の特例とは?
2016年4月1日から2019年12月31日の間に、相続などにより取得した住宅やその敷地を売却し、一定の要件を満たしたときは、譲渡所得(売却した時の利益のこと)の金額から3,000万円控除できるという制度です。
対象となる住宅は、下記の3つの要件すべてを満たすものとなります。
- 昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
- 区分所有建物登記がされている建物でないこと。
- 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
また、対象となる敷地は、相続の開始直前において被相続人(相続財産の元の持ち主、つまり、亡くなった方)の居住用家屋の敷地であったものとなります。
個人が保有する仮想通貨の評価
個人が保有する仮想通貨については、期末の仮想通貨の価額は、下記のいずれかの方法により算出した取得価額をもって評価します。
- 移動平均法
- 総平均法
法定評価方法は残念ながら大綱には記載がありませんでした。
配偶者に係る控除の二重適用の禁止
与党税制改正大綱には、以下の記述があります。
給与等又は公的年金等の源泉徴収における源泉控除対象配偶者に係る控除の適用については、夫婦のいずれか一方しか適用できないこととする。
(中略)
(注)上記の改正は、平成32年1月1日以後に支払われる給与等及び公的年金等並びに平成32年分以後の所得税について適用する。
(自由民主党ホームページ「平成31年度税制改正大綱」より抜粋)
ん!?ということは、
2018年と2019年については、夫が妻を配偶者控除(または配偶者特別控除)にし、妻が夫を配偶者控除(または配偶者特別控除)にすることが可能
ということなのですね…。盲点でした。
税理士の仕事としては、ほぼそういうケースはないのですが。
源泉徴収票の確定申告書への添付不要
確定申告書にはこれまで源泉徴収票の添付が必要でしたが、2019年4月1日以後に提出する確定申告書からはその添付が不要になりました。
このほか、特定口座年間取引報告書などについても、添付が不要となっています。
年末調整の適用を受けた所得控除の合計額の記載
年末調整を受け、かつ、その後に確定申告をする場合、年末調整で受けた所得控除の内訳を確定申告書にも記載する必要がありましたが、2019年4月1日以後に提出する確定申告書については、所得控除の内訳の記載が不要となり、合計額を記載することができることとなります。
法人税の改正内容
イノベーション促進のための研究開発税制の見直し
研究開発税制が見直され、試験研究費の総額に係る税額控除制度の税額控除率が見直されます。
控除税額の上限は法人税の25%ですが、設立10年以内の法人のうち繰越欠損金がある法人(大法人の子会社等を除きます)については、控除税額の上限が法人税額の40%となります。
みなし大企業の判定の見直し
「みなし大企業」の判定が見直されます。
租税特別措置法の中小企業者向けの優遇税制の適用を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
- 資本金の額が1億円以下
- 従業員数が1,000人以下
ただし、資本金の額が1億円以下であっても、同一の大規模法人に50%以上所有されている、または、2以上の大規模法人に3分の2以上保有されている法人は「みなし大企業」とされ、中小企業向けの優遇税制を受けることができません。
なお、これまでは大規模法人とは、以下のいずれかを満たす法人のことを指していました。
- 資本金の額が1億円超
- 資本金または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1000人を超える法人
2019年度税制改正により、上記に加え、以下の要件を満たす法人についても大規模法人とされることになります。
- 大法人(資本金5億円以上等の法人)の100%子会社
- 100%グループ内の複数の大法人に株式等の全部を保有されている法人
仮想通貨の評価方法に時価法導入
法人が保有する仮想通貨の評価については、次の通りとなります。
- 期末に保有する仮想通貨のうち、活発な市場が存在する仮想通貨については、時価評価により評価損益を計上
- 仮想通貨の譲渡損益は、譲渡契約をした日の属する事業年度に計上
- 仮想通貨の譲渡原価の計算上、一単位当たりの帳簿価額の算出方法を移動平均法または総平均法による原価法とする(法定算出方法は移動平均法)
- 未決済の仮想通貨の信用取引等については事業年度末に決済したものとみなして計算した損益を計上
上記の改正は、2019年4月1日以後終了事業年度からの適用となります。
なお、2019年4月1日前に開始し、2019年4月1日以後に終了する事業年度について、会計上、仮想通貨について時価評価していない場合には、上記1及び4については適用しないことができる経過措置が設けられるとのことです。
法人設立届出書及び外国普通法人となった旨の届出書の添付書類
添付書類は、定款等の写しのみでよいこととなります。
過大支払利子税制の見直し
課税対象となる純支払利子の額、調整所得金額、損金不算入額、適用免除基準が見直されています。
移転価格税制の見直し
BEPSプロジェクトの勧告により改定されたOECD移転価格ガイドライン等を踏まえた見直しが行われています。
個人的に気になったのは、移転価格の更正等の期間が6年から7年に延長されたことです。
その他の税目の改正内容
ふるさと納税の見直し
返礼品がお得感満載だと、ふるさと納税の対象外になってしまうとのこと。
過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような地方公共団体については、ふるさと納税の対象外にすることができるよう、制度の見直しを行う。
(自由民主党ホームページ「平成31年度税制改正大綱」より抜粋)
ふるさと納税の対象となる自治体の返礼品は、次の基準をいずれも満たすものとなります。
- 返礼品の返礼割合を3割以下とする
- 返礼品を地場産品とする
法人事業税の税率の改正および特別法人事業税(仮称)の導入
法人事業税の税率が縮小されるとともに、国税である特別法人事業税(仮称)が導入されます。
新設される特別法人事業税(仮称)は、都道府県へ申告納税を行います。
2019年10月1日以後開始事業年度から適用されます。
地方法人特別税がなくなったと思いきや、特別法人事業税の導入…。
多分、税理士以外興味ないと思いますので、ここでは説明は割愛します。
金地金等の消費税における仕入税額控除制度の見直し
金地金等の密輸に対応するため、金地金等の購入に係る消費税における仕入税額控除制度について、下記の見直しが行われます。
- 密輸品と知りながら行った課税仕入れについては、仕入税額控除を認めない(2019年4月1日以後適用)
- 金または白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を世仕入税額控除の要件に追加(2019年10月1日以後適用)
ウイスキー等の酒税の税率引き上げ
輸入するウイスキー等の酒税の1㎘あたりの税率が下記の通り、引き上げられます。
ウイスキー:60万円→80万円
スピリッツ:40万円→50万円
リキュール:30万円→40万円
※ 2019年10月1日から実施
税率が上がると値上げになると思われますので、お好きな方は税率引き上げ前に買いだめしたほうがいいかもしれません。
東京オリンピック・パラリンピックの参加者等の非居住者および外国法人の非課税
東京オリンピック・パラリンピックに参加する選手・審判等で日本に住んでいない方が受け取る給与等については、所得税は課税されないこととなります。
大会を主催する外国法人、大会関連業務を行う外国法人が支払いを受ける一定の使用料、その他の所得については、所得税および法人税が課されないこととなります。
オリンピックがあるときには、このような税制改正も必要になるのですね。
外国弁護士も税理士業務が可能に
外国の弁護士が日本で税理士業務を行うことが可能になる見込みです。
税制改正大綱によると、以下の通りとされています。
外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法の改正を前提に、弁護士・外国方事務弁護士共同法人(仮称)(弁護士である社員の全員が国税局長に通知しているものに限る。)について、国税局長に通知することにより税理士業務ができることとする
(自由民主党ホームページ「平成31年度税制改正大綱」より抜粋)
個人的には、「大丈夫なのか?」と不安になる改正です。
きちんと税法を熟知している方が税理士業務を行うのであれば問題ないと思うのですが、外国の弁護士が税理士業務を行うにあたり、どのような措置をとるのでしょうか。
もっとも、外国の弁護士が税理士業務を自分で行うというのはハードルが高いので、私の勝手な予測では、税理士や会計事務所経験のある人を採用して税理士業務を行わせる(親分の外国弁護士はハンコを押すだけ)ことになるのではないかと。
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【編集後記】
12月4日に始まったPayPayの20%還元が13日に早くも終了…。
電化製品の購入に備えてアプリを設定したにもかかわらず、買い物に行く時間が取れなくて5万円を取り逃しました…。
悔しすぎてPayPayは使う気になれないです。。
しばらくは、これまで通り、キャッシュレス決済のメインはSuica、クレジットカードとなりそうです。
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