本日(2018年6月1日)、2018年3月30日公表の「収益認識に関する会計基準」に伴って行われた平成30年度税制改正について、法人税法基本通達の改正内容が公表されました。
事前の予想の通り、大規模な税制改正となりました。
【2018年度税制改正大綱】収益の認識等の税制改正は大規模になる予感!?
収益認識に関する会計基準の税制改正への影響
「収益認識に関する会計基準」の位置付け
これまでは収益の認識については、「企業会計原則」に基づいて処理を行っていました。
しかし、国際会計基準や米国会計基準では、収益認識に関する包括的な会計基準が2018年1月1日以後開始事業年度から適用されることとなり、その影響を受けて日本でも「収益認識に関する会計基準」が導入されることとなり、「企業会計原則」に優先して適用されることとなりました。
「収益認識に関する会計基準」の適用対象と適用時期は以下の通りです。
適用対象
大企業などの監査対象法人
※ 中小企業(監査対象法人以外)については、引き続き企業会計原則に則った処理が可能
適用時期
2021年4月1日以後開始事業年度から強制適用
※ 下記の事業年度からの早期適用も可能
- 2018年4月1日以後開始事業年度
- 2018年12月31日以後終了事業年度
つまり、2018年度税制改正の収益認識等の改正は、監査対象の法人以外であれば特に従前と変わりません。
また、適用対象となる法人であっても、早期適用さえしなければ、2021年4月1日以後開始事業年度までは従前どおりで問題ありません。
「収益認識に関する会計基準」による影響
「収益認識に関する会計基準」は、「履行義務」という新たな概念をベースに、収益の単位、収益の計上時期及び計上額を慎重に行おうという趣旨のものです。
平たく言えば、この「収益認識に関する会計基準」を適用することにより、売上計上額は小さくなり、これをそのまま法人税で安易に認めてしまうと租税回避につながる恐れがあるので、「収益認識に関する会計基準」を法人税で認めるための要件をしっかりと法令や通達に織り込んでおこうというものなのです。
従来通りの企業会計原則での収益認識のほうが課税所得は多めに計上されることになりますので、今まで通りの収益認識を行っていれば、基本的には問題になることはほぼないだろうと思われます。
経理部が税理士へ伝えるべきこと
この税制改正は監査対象の法人ですから、税務上、誤った処理にならないようにするためには、経理部が重要な役割を果たします。
「収益認識に関する会計基準」の影響を受ける法人は、この税制改正により、税務上、以下のことを意識しなければなりません。
- 会計上の処理と法人税上の処理が一致するのか、それとも乖離するのか?
(収益計上額を例にとると、値引きや割り戻しであれば処理が一致する可能性が高いが、返品や貸倒れの見込みの場合は乖離する) - 会計上の処理と法人税上の処理が一致しても、これらの処理と消費税の処理が乖離する場合がある
(会計や法人税では会社が付したポイントについて履行債務として負債として認識することがあるが、消費税の場合はポイントも含めて売上と認識するなど)
この論点を事前に検証するため、顧問税理士には「収益認識に関する会計基準」による影響の有無、影響がある場合にはどの事業年度から適用を開始するのかを伝えておくとよいでしょう。
税理士がこの改正で意識するべきこと
まずは、顧問企業に監査対象の法人があるかどうかです。
ないようであれば問題ありませんが、監査対象となる法人がある場合には、顧問先が「収益認識に関する会計基準」の影響を受けるかどうかを確認し、影響を受ける場合には税制改正の内容だけではなく、「収益認識に関する会計基準」の概要についても併せて勉強しておく必要があるでしょう。
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【編集後記】
4月、5月と仕事に追われていた感があり、気が付けば髪の毛がボサボサになっていたので、今日は美容室に行ってきました。
ここ最近は、お客さんから
「髪切りました?雰囲気が変わりましたよね?」
と言われることが何度かありました。
本当はボサボサの髪の毛をワックスで固めて誤魔化していただけなのですが(^_^;)
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