年10万円を超える医療費を支出した場合、確定申告をすることにより医療費控除の適用を受け、所得税の負担を軽くすることが可能です。出産があった年には、医療費の額が10万円を超えることも多いと思いますので、そのときの節税額を最大化する方法をご紹介します。
医療費控除による節税額の計算
節税効果の計算方法
医療費控除を受けることによる所得税の節税額は、下記の通り計算します。
医療費控除の額×所得税率
日本の所得税は累進課税を採っていますので、医療費控除の適用を受けることによる節税効果は、所得の高い方ほど大きく、所得の低い人ほど小さい(又は節税効果がない)というのが現状です。
医療費控除の額は、以下の通り計算します。
(実際に支払った医療費の合計額-保険金などで補てんされる金額(※1))-10万円(※2)
※1 生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金などが該当します。保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
※2 その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等5%の金額
同一生計の妻、親族のために支払った医療費は医療費控除の対象
医療費控除は、同一生計の妻や親族に対して支払った医療費に対しても控除の対象となります。そのため、共働き世帯の場合にはより多くの税金を納めている者が同一生計の分の医療費をまとめて申告することが節税効果を高めることにつながります。
ご両親に生活費を送金している場合には、ご両親も同一生計の親族となりますので、ご両親の医療費については所得の高い方がまとめて医療費控除を選択して確定申告で医療費控除の適用を受けることが節税効果を高めます。
医療費控除の対象となるもの
出産に伴う費用のうち医療費控除の対象となるもの
出産に伴う費用のうち、医療費控除の対象となるものは、出産時に係る費用のほか、以下に掲げるものが該当します。
- 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用
- 通院費用
- 入院中に病院で支給される食事(入院代に含まれるもの)
上記1や3は、病院から領収書が発行されますので、基本的には、妊娠が判明してから出産までの間に病院から受領した領収書と通院費用が対象と考えていただければよいでしょう。
上記2の通院費用については電車やバスなどのように領収書のないものが多いのですが、家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておけばOKです。
出産で入院するときにタクシーを利用した場合には、そのタクシー代は医療費控除の対象となりますので、タクシーの領収書は必ずもらうようにしましょう。入院が出産という緊急時のため、通常の交通手段によることが困難ということで、医療費控除の対象として認められています。
なお、通院費用とは言っても、実家で出産するために実家に帰省する交通費は医療費控除の対象にはなりません。
また、入院に際し、寝巻きや洗面具など身の回り品を購入した費用は医療費控除の対象になりません。
入院した時に病院から支給されている昼食代については入院代に含まれますので、医療費控除の対象になります。しかし、他から出前を取ったり外食したりしたものは、控除の対象にはなりませんのでご注意ください。
出産以外の費用で医療費控除の対象となるもの
医療費控除の対象となる医療費は次のとおりであり、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額とされています。
- 医師又は歯科医師による診療又は治療の対価(ただし、健康診断の費用や医師等に対する謝礼金などは原則として含まれません。)
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価(風邪をひいた場合の風邪薬などの購入代金は医療費となりますが、ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金は医療費となりません。)
- 病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、指定介護老人福祉施設、指定地域密着型介護老人福祉施設又は助産所へ収容されるための人的役務の提供の対価
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術の対価(ただし、疲れを癒したり、体調を整えるといった治療に直接関係のないものは含まれません。)
- 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話の対価(この中には、家政婦さんに病人の付添いを頼んだ場合の療養上の世話に対する対価も含まれますが、所定の料金以外の心付けなどは除かれます。また、家族や親類縁者に付添いを頼んで付添料の名目でお金を支払っても、医療費控除の対象となる医療費になりません。
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の対価
- 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額
医療費控除の節税効果を高める方法
上記で述べたとおり、医療費控除の計算上、10万円を控除した残りの医療費の額がその控除の対象となります。つまり、医療費控除の節税効果を高めるためには、医療費控除の適用を受けるタイミングにより多くの医療費を発生するようにすることが肝要です。出産時に医療費控除の適用による節税効果を高めるためには、以下の方法が考えられます。
出産予定日を9~12月になるようにする
妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用が医療費控除の対象となるため、出産予定日が9月~12月となるようにすると、妊娠後の定期健診などの費用と出産時の費用が同一年で医療費控除の対象とでき、節税効果が大きくなります。ただし、児童手当の支給を受ける場合には、児童手当の支給に伴う収入のほうが大きいため、出産予定日を9~12月にするよりも、出産予定日を4月にすることにより、より多くの児童手当の支給を受けることができるため、有利と言えます。
ただし、出産予定日をコントロールするのは、実際には難しいと思います。私の子供も誕生日が2月~3月となったため、最大限のメリットを受けることはできませんでした。
つまり、この節税方法については、正直、お勧めできるものではありません。
レーシックの手術を受ける
病気や怪我というものは、自分でその時期をコントロールできるものではありませんので、病気や怪我で医療費控除の節税メリットを最大化するのは困難です。しかし、医療費控除の対象となる費用でその時期をコントロールできるものがあります。それがレーシックの手術です。ただ、後遺症の問題で訴訟となっているということもあり、それを選択するかは個々人の判断になると思います。私の知人ではレーシックの手術を受けたおかげで眼鏡やコンタクトレンズなしで日常生活を送れるようになり非常によかったと評価している方もいますが、私は目にメスを入れることに抵抗感があり、レーシックの手術を受けていません。
レーシックは自由診療であるため、安心できる医療機関で手術を受ける場合には、かなりの出費があることと思います。ですので、出産する方と同一生計でレーシックを検討している方にとっては、出産の年にレーシックの手術を受けることによって、節税効果を高めることが可能となります。
禁煙治療を受ける
私の一番のお勧めは、禁煙治療を受けることです。禁煙治療も基本的には自由診療になりますので、医療費が高くなってしまうことがあると思います。特に妻が出産するという夫にとっては、禁煙外来は一石二鳥と言えます。禁煙外来に行くことで費用は掛かってはしまいますが、医療費控除の節税効果を高めることができますし、赤ちゃんが生まれたときに赤ちゃんが副流煙を吸ってしまうことにより健康被害を受けることを防ぐことができます。
愛煙家の方にとっては難しい決断かとは思いますが、自身の健康のため、赤ちゃんの健康のため、検討してもよいかと思います。
おすすめの確定申告方法
医療費控除を受ける場合には、確定申告が必要になります。医療費控除のために行う確定申告の方法としてお勧めなのが、電子申告です。マイナンバーカードをお持ちの方は、それを活用することもできますし、お持ちでなかったとしても、税理士会が行う無料相談会で電子申告を行うことが可能です。電子申告で医療費の明細を入力した場合には、領収書の添付も省略することが可能です(ただし、領収書の保存は必要です)。確定申告の時期はまだまだ先ですので、確定申告の方法の詳細については、また確定申告の時期にお届けしたいと思います。
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【編集後記】
昨日は併設する会計法人の設立のため、東京法務局へ行きました。とても暑い日であったため、法務局に着いたときには喉がカラカラでした。そこで、スタバへコーヒーを飲みに行ったのですが、満席状態。運よく座ることができたのですが、スタバの人気、恐るべしと感じました。
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