税理士報酬は安ければ安いほどいいのか?

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qimono / Pixabay
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昨今、税理士報酬は低下してきています。家電を買うときは価格コムで値段をチェックして一番安いのを買うというのは賢い買い方ですが、税理士報酬も同じでよいのでしょうか。

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家電の価値と税理士の価値

家電は同じ商品であればいくらで買っても同じ性能です。梱包が汚れているとかで安くはなっていても、欠陥商品を売ることはできないので、製品自体の品質は同じです。

税理士はというと、人も違えば出来るサービスも個人差があります。金太郎飴のようにどの税理士も同じサービスが受けられるなんていうことはまず、ありません。当然のように、値段に応じてサービスに差が出でしまうのです。

ただし、一部の会計事務所では提供しているサービスの価値以上に報酬をとっているところもあれば、逆のところもなくはないでしょう。

税理士がお客様にできること

税理士がどのような価値をお客様に提供できるのでしょうか。一般的な事項をまとめてみました。

領収書の束を受け取って決算書・申告書を作成する経理やさん

「税理士には領収書の束を送っているだけ。それで、決算書から申告書まで全部作ってくれるよ。値段はたった●円だけ」

独立してからというものの、こういう声を聞く機会が増えてきました。う~ん・・・。これってただの経理代行会社だよね、と思ってしまいます。領収書やレシートを整理することなく袋で送られてきた場合は、事務代行も含むといったところでしょう。

領収書を受け取って会計ソフトで仕訳を入力し決算書まで作る、これって会計業務であり、税理士の独占業務ではありません。これだけなら経理代行会社で十分できる仕事です。

申告書を作るというところだけは税理士の独占業務ではありますが。

経理を助け、経理の効率化まで支援する経理部長

領収書がきちっと整理され、現金出納帳、売掛金、買掛金、経費の管理ができている場合には、税理士は経理部長として活躍することができます。会社で自計化までできていると、税理士はチェック業務とコンサルティングに注力できますから、精度の高いチェックと付加価値の高い提案をすることが可能になります。

例え自計化までいかなくても、領収書をノートに貼るといった誰でもできる業務がない分だけ、記帳代行やコンサルティングに注力できます。クラウド会計を活用している税理士であれば、経理の効率化(freee株式会社HPによると経理の効率が50倍とのこと。。)で、経営者がより本業に集中できる環境を整えることも可能です。

資金繰りをチェックする財務部長

日本における倒産の約半分が黒字倒産と言われています。利益が出ているにもかかわらず、資金繰りが困難となりやむを得ず倒産…ということが起こっているのです。

資金繰りのチェックは大規模な会社ですと一般的には財務部長の役割ですが、小さい会社では税理士にお願いするというのも一つの手です。会社の数字をよく知っている税理士に資金繰りの問題点を確認してもらい資金繰りを改善させるとともに、必要な時に必要な投資ができる、そういった体制を整えるために税理士を活用するのもありでしょう。

経営計画・事業計画を一緒に作って社長の夢の実現を応援する経営企画

ここ最近、会計事務所での収益拡大のための付加価値提供サービスとしてよく耳にするのが「未来会計」という言葉です。すでに終わった取引を処理する「過去会計」では付加価値は見出すのが難しいので、経営計画や事業計画を社長さんと一緒に作って、社長の実現のお手伝いをしましょう!というサービスです。

これは大企業では経営企画などの部署が取り扱っています。しかし、小さい会社では、お金のことの一番の相談役となれる存在が税理士ということも多いことでしょう。そこで、税理士が社長さんとともにその思い描く夢を数字という形で経営計画や事業計画に落とし込み、予実管理という形でモニタリングをして夢の実現のお手伝いをするのです。

でもやっぱり税金の専門家

上記で述べたように、税理士って経理の代行やさんだけではなく、経理部長、財務部長、時には経営企画という役割ができるのです。ただ、やっぱり、税理士は税金の専門家です。税金の面で期待してもらいたいものです。税理士が税金ことでできること、いろいろありますが、ほんの一例だけ紹介します。

  • 個人事業主 or 会社設立の有利不利
  • 役員給与の適正化、福利厚生制度の利用による節税
  • 税務調査の対応
  • 事業承継・相続対策
  • M&A
  • 海外進出時の税金のお困りごとの対応(国際税務)

税務調査対応は事前の準備が一番の対策です。税理士なしでいろいろとごまかしつつやっていたけど、税務調査でかなりの追徴を受けてからというものの、顧問税理士を付けるようになったというのはよく聞く話です。税務調査官もプロですから、納税者のよくあるごまかし方を知っているので、簡単にはいかないのです。

下の3つは専門性が高く、税理士によって対応が可能であったり、難しかったりもしますので、税理士選びも大事になります。

税理士報酬が安くても税理士が利益をあげるためにしていること

税理士は会計のプロ!

税理士は会計のプロです。ですから、売上だけ伸ばして利益は度外視!ということはなかなかないでしょう。税理士報酬が安い場合、それなりのコストになるように工夫しています。

会計事務所の職員は給料が安い

まあこれは税理士報酬が下落傾向になる前からのことでしょうが、一般的な会計事務所の職員の給料は低く抑えられていることが一般的です。会社員として生計を立てていくのであれば、会計事務所の職員よりも大企業に勤めることを目指したほうが明らかによい給料がもらえます。

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簡単な事務作業はパートやアルバイトを使って人件費を抑制しています。クラウドワークスやランチャーズを利用したりすると、それ以上に安く仕事をしてくれることもあるようです。

サービスを削っている

会計事務所の原価は人件費です。つまり、税理士報酬が安い場合には、人件費をかけない、つまり、時間をかけないということです。

領収書の束が送られてきたら、それを入力して決算書・申告書を作るだけにして、チェックも最小限にとどめます。本来あるべき領収書がなくても、税務上不利な給料の払い方をしていても、おや?と思う領収書があっても、よりよい節税策があっても、それを提案することに時間をかけたら赤字になってしまいます。

そもそも、その入力に提案力のある人は使わないと思いますし…(提案力のある人を使った時点で赤字なので)。

身を削っていることもあるようです…

とはいえ、税理士も過当競争となっているこのご時世です。とにかく仕事をもらうために値段を大きく下げることを選択する税理士もいるようです(私はそういう人に会ったことないのですが)。

値段を下げれば仕事は入ってくるのでしょうが、それで食べていくためにはより多くの仕事を獲得しなければなりません。多くの仕事を獲得し、安い人件費で回してブラック企業化すれば食べていくようになれます。

しかし、値段を下げて仕事を獲得してもブラック企業化できず、時間をかけて丁寧に仕事をする善良な税理士は、身を削ることになってしまいます。毎晩遅くまで働き、土日潰して頑張っているのに利益は出ない…

私の場合

私の場合、お客様には提供できるサービスをしっかりと提供し、税理士としての付加価値を感じて頂ける仕事をすることをモットーとしています。ですから、格安会計事務所に対抗するような価格設定はできません。とはいえ、昔ながらの大したサービスはしていないのに報酬だけ高いというのは良心の呵責を感じてしまいます。

ブラック企業化して、安い報酬を掲げているけど、実は大したサービスをせずにかすめ取ってるっていうのも性に合いません。

税理士としての付加価値を感じてもらう仕事をして、適正な報酬を頂いてwin-winでやっていくのが一番と考えています。

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【編集後記】

今週は執筆の仕事があったため、活字を打つことが多かった一週間でした。論点も連結納税だったので、頭のよい体操になりました。

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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