2018年11月19日(月)のニュースで気になったものといえば、やはり、東京地検特捜部が日産自動車、三菱自動車、ルノーの会長を兼務するカルロス・ゴーン氏を金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の容疑で逮捕したことでしょう。
2015年3月期までの5年間の報酬額の合計額が約99億9800万円だったのに対し、有価証券報告書では計約49億8700万円と記載しており、報酬の記載を約50億円少なく記載していたとのことです。
我が家の愛車は日産のセレナですので、他人ごとではありません。
購入から約8年が経過し、そろそろ買い替えも検討しなければならない時期です。
次も引き続き日産の車にするのか、それとも他のメーカーの車にするのか、今後の日産自動車の動向に注目して判断したいところです。
有価証券報告書とは
今回のニュースでは、「有価証券報告書の虚偽記載」ということが問題となっていました。
つまり、有価証券報告書の中で記載すべき役員報酬の金額を少なめに書いていたということです。
有価証券報告書の記載事項は、下記の通りです。
- 企業の概況
- 事業の状況
- 設備の状況
- 提出会社の状況
- 経理の状況
報告書の大半を占めるのが「5 経理の状況」です。
そのため、多くの会社では経理部が有価証券報告書を取りまとめています。
監査法人とのコンタクトも主に経理部が窓口となっています。
役員に関する記載事項
役員に関する記載事項は、「4 提出会社の状況」のうち下記の2つです。
- 役員の状況
- コーポレートガバナンスの状況等
「役員の状況」では、
- 役職
- 氏名
- 生年月日
- 略歴
- 任期
- 所有株式数
などが開示されています。
そして、問題の「役員報酬」が記載されているのは、「コーポレートガバナンスの状況等」です。
2003年から役員報酬の開示が求められるようになりましたが、2010年からは報酬1億円以上の役員については、個別に報酬額を開示することとされました。
ここでの報酬額の開示が虚偽の記載だったということなのです。
有価証券報告書とは?
「有価証券報告書とは、金融商品取引法で規定されている、事業年度ごとに作成する企業内容の外部への開示資料である。略して有報(ゆうほう)と呼ばれることもある。」(ウィキペディアより引用)
有価証券報告書を開示する必要があるのは、金融証券取引所に株式を上場している会社や店頭登録している株式の発行会社などです。
余談ですが、Big4の税理士法人に勤務し始めたばかりの頃、仕事で上司に「有報(ゆうほう)、見てくれる?」と言われ、「え?UFO???」と困惑してしまったことがありました(^-^;
有価証券報告書の虚偽記載
有価証券報告書の虚偽記載をすると、下記の罰則があります。
個人:10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金又は併科
法人:7億円以下の罰金
また、金融商品取引所の上場廃止基準に抵触してしまいます。
日産自動車の有価証券報告書を読んでみる
ニュースでの概要ではイマイチ、詳細が見えてこないため、有価証券報告書を読んでみました。
今回、調べてみたことは、下記の通りです。
- カルロス・ゴーン氏の略歴
- ゴーン氏の側近で、ともに逮捕されたケリー氏の略歴
- 日産自動車の役員報酬
- 監査法人と監査報酬
カルロス・ゴーン氏の略歴
まず違和感を感じたのが「昭和29年3月9日生まれ」との記載でした(グローバル化社会なのだから和暦は不釣り合いな気がします)。
有価証券報告書では、1996年10月ルノー入社から記載があります。
同年12月にルノーの上級副社長に就任し、1999年6月から日産に派遣され、取締役に就任し最高執行責任者(COO)となります。
翌年2000年6月には取締役社長に就任し、2001年6月から最高経営責任者(CEO)となります。
2005年からはルノーの最高経営責任者(CEO)にも就任しています。
ところで、気になるのはルノー入社前はどうだったのか?です。
入社してすぐに副社長ということは、それなりにキャリアを積んできているはずです。
そこで、日本経済新聞の記事を見てみると、以下の通りに略歴が書いてありました。
ゴーン会長は1954年にブラジルで生まれ、ブラジルミシュラン社長、北米ミシュラン社長を経て、96年にルノーの副社長に就任。99年、経営危機に陥っていた日産の筆頭株主になったルノーから日産に派遣された。
99年10月、3年間で1兆円のコスト削減などを柱とする日産リバイバルプランを公表し、その後、日産の業績はV字回復。2000年に同社社長に就き、01~17年、最高経営責任者(CEO)を務めた。
さすがです。要点をコンパクトにまとめており、わかりやすいです。
ケリー氏の略歴
ゴーン氏の側近で、今回の件で逮捕されていることから、「ルノー出身?」と思っていましたが、違いました。
有価証券報告書によると、1988年3月に北米日産会社入社とありました。
日産自動車本体の執行役員に就任したのが2008年4月からです。
それまでは北米日産会社で人事部で過ごしていたようです。
そして、2015年2月から代表取締役に就任しています。
日産自動車の役員報酬
日産自動車の金銭による役員報酬は、2008年6月以降は年額29億9,000万円以内とされています。
監査役への報酬は2億2,000万円以内とされています。
2018年3月期の役員報酬の内訳は、下記の通りです。
※ 日産自動車の2017年度有価証券報告書より引用
取締役の報酬総額が約16億5千万円で、そのうちゴーン氏が約7億円、西川氏が約5億円ですから、残り6人の取締役の平均報酬は7千万円です。
また、監査役の平均報酬が約5,000万円、社外役員の平均報酬が約2,500万円ということもわかります。
ちなみに、従業員の平均給与(年額)は、約818万円でした。
監査法人と監査報酬
監査法人は、新日本有限責任監査法人です。
私は、その系列の税理士法人にいましたので、有報を見る前から知っていたのですが…。
「東芝に続き、またか!」と批判されてしまうのでしょうか。
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ちなみに、2018年3月期の新日本有限責任監査法人が日産自動車(連結子会社からの報酬を含む)から受けた報酬は、以下の通りです。
- 監査報酬 約7億7,400万円
- 監査報酬以外の報酬 約2,200万円
なお、監査業務に従事していたのは公認会計士33名、公認会計士以外の者78名とされています。
つまり、監査法人側から見れば従業員1名当たりの売上が約7百万円です。
最後に
今回の報道、ものによっては「約50億円の報酬過少申告」というようなタイトルで報道されていました。
これって、脱税っぽい表現だな、と。
でも、容疑は「有価証券報告書の虚偽記載」です。
会社の資金の私的流用があったとも報じられていますが、どうなのでしょうか。
直近で税務調査があったようですので、もし会社資金の私的流用があったようであれば、そこで判明しているのではないでしょうか。
今後の動向を見て、次の車の買い替えの判断の一材料にしたいと思います。
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【編集後記】
このブログを書く直前、私のTwitterのアカウントをみたら、「ブログを平日毎日更新中」と書かれていました。
現在は平日毎日更新できていないので、虚偽記載ですかね…。
気付いてすぐに修正しました。
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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。
また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。
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