本日(2017年8月14日)の日本経済新聞の朝刊によると、財務省と国税庁は、2018年度税制改正大綱に現在は紙で行われている年末調整の手続きを2020年を目途にインターネットで完結できるようにすることを盛り込むとのことです。会社員にとっては、毎年会社から渡される年末調整書類への記載の手間が省くことができます。企業側にとっても、会社員から受け取った紙の書類を添付されている証明書と照合して記載の誤りがないかどうかのチェックをするといった手間が軽減されます。
現状の年末調整の問題点
年末調整とは、給与所得のみの会社員の所得税の計算を会社員本人が計算して確定申告をする代わりに、会社で会社員の所得税を計算して源泉徴収をし、税務署へ納税するというものです。
年末調整で考慮するのは、配偶者控除や扶養控除などの人的控除のほか、社会保険料控除、生命保険料控除、住宅ローン控除です。
社会保険料控除、生命保険料控除、住宅ローン控除について年末調整を受けるためには、会社員が国民年金に関する控除証明書、生命保険などに関する控除証明書、住宅ローンの年末残高に関する証明書、住宅ローン控除の申告書などの書類を会社に提出することにより、会社側で年末調整を実施します。
この年末調整ですが、現状では、主に下記の3点の問題点があります。
- 紙でのやり取りでコストがかかる
- 年末調整を間違えてしまうリスク
- 証明書の紛失による手間
紙でのやり取りでコストがかかる
現状、年末調整は下記の流れで行われています。
【会社】扶養控除等申告書、保険料控除申告書を会社員へ配布
↓
【会社員】記入・押印&必要書類を添付して会社へ提出
↓
【会社】社員から回収した年末調整書類をチェック&社員の所得税を計算
会社側は、社員の人数分だけ扶養控除等申告書と保険料控除申告書を印刷して社員へ配布し、社員は手書きでその用紙へ必要事項を記入し、その手書きのものを会社がチェックするという運用になっています。
年末調整書類の記入ですが、当然のことながら、ご記入は多いです。そのため、内容確認とその訂正などで会社の人事労務部門の担当者はそのチェックと訂正依頼などの事務で大忙しです。
また、紙ベースですから、その書類の保管コストもかかります。
年末調整を間違えてしまうリスク
年末調整書類については、基本的には会社で保管をし、税務署からの要請があった場合のみ、税務署へ提出することになります。つまり、基本的には年末調整書類は会社で保管されるので、税務署がその年末調整書類を1枚1枚チェックするということは行っていません。
すると、会社が年末調整の計算を間違ってしまった場合、会社員の方で気付かない限りは、間違えたまま誰も気づかないということが十分起こりえます。税務署の方で全件チェックは行っていないので、間違えたらそのままになってしまいます。
特に、保険料控除証明書は、保険会社によってフォーマットが異なっており、用紙に記入する会社員がご記入をしてしまい、それをチェックする会社側でも見逃してしまうという可能性は、十分考えられます。
証明書の紛失による手間
会社員にとって手間なのは、書類の保管です。保険会社から控除証明書が送られてきて、それを保管して会社から渡された保険料控除証明書に記入するという作業は、面倒くさいものです。
保険料控除申告書を書こうと思いきや、保険料控除証明書がどこにしまったかわからず、探すのに一苦労といった経験のある方も少なくないでしょう。書類の保管場所はGoogleで検索しても出てきませんので厄介です。
証明書を紛失してしまったら、保険会社へ再発行を依頼しないといけないので、探す時間、再発行の手続きと大きな負担になってしまいます。
年末調整がネットで完結すると…
年末調整がネットで完結するようになれば、会社員は控除証明書を紛失することはなくなります。また、控除証明書の内容が保険会社からネットで提供されることで、会社側の事務負担が軽減されるとともに、年末調整の計算を間違えるリスクも大幅に軽減されます。
国税当局にとっても、大きなメリットがあります。計算が正確になることで、職員の負担軽減に繋がりますし、情報の取得も容易になります。
年末調整がネットで完結するためには?
マイナンバーカードの取得
年末調整がネットで完結するためには、社員がマイナンバーカードを取得する必要があります。2017年5月時点では普及率が10%に満たないマイナンバーカードですが、これにより普及が進むことが期待されます。
マイナポータルの利用
年末調整に必要な情報は、マイナポータルにて収集することになります。
まだ運用が始まっていなく、どの程度普及するかは未知数ですが、普及が進めばマイナポータルでの手続きで会社員側も事務手数が削減されるでしょう。
ただ、マイナポータルの普及が進まないとなると、マイナポータルへのアクセスの仕方がわからないということで、かえって負担になってしまうかもしれません。
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【編集後記】
昨日、父の70歳の誕生日のお祝いで家族で食事会をしました。古希のお祝いは、本来、数え年の70歳(つまり、満69歳)のときに行うものだと思うのですが、満69歳だとピンとこないらしく、1年遅れでの古希のお祝いとなりました。
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