最近、会社を辞める時に「卒業する」と呼ぶ動きが広がっているようです。
私も3度転職をし、4度会社を辞めましたが、途中で放棄して辞めるのではなく、学ぶべきことを学び、やるべきことをやってから退職しています。
大企業に就職して得るもの・失うもの
日本では、大学を卒業して就職したら、定年までその会社に勤めるのがあるべき姿とされてきました。
今でこそ、転職をすることが珍しくない時代にはなりました。
しかし、それでも大学での就職活動の時には、定年退職まで1つの会社で勤め上げるという意識で会社を探している学生がまだまだ多いのが現状でしょう。
そして、念願の大企業に就職できた暁には、定年までの安定した給料と福利厚生が約束されます。
(もちろん、大企業であっても、必ず倒産しないわけでもなく、リストラがあったり、給与削減がないわけではありません。)
ただし、それと引き換えに失うものもあります。
- 職種や勤務地を選べない
- 会社が決めた通りの仕事の仕方しかできない(裁量がない)
- 一緒に働く人を選べない
- 決まった時間に決まった場所で働かなければならない
- 成果を残したからと言って給料が激増することはほぼない(その代わり、失敗しても大して給料が下がらないというメリットはある)
もちろん、自分で職種や勤務地を決められる方や裁量をもって働くことが出来る方はいるとは思いますが、基本的には会社の業務命令に従って仕事をするものです。
つまり、これらに共通しているのは、自主的に物事を行う自由が制限されているということです。
この自由が制限されているということは、何も悪いことばかりではありません。
私が独立して感じたのは、選択肢が無数にありすぎてどうすればいいかわからないということでした。
自由すぎて何をすればよいかわからないというのは、それを解決するのに大いに悩みますし、時間も大幅にかかってしまいます。
自由が制限されるということは、決めてもらえるので楽という見方もできるのです。
転職できるというのは労働者の権利
働いてから感じたのは、会社の雰囲気、仕事の仕方、得ることが出来るスキル、本当に自分の興味の持てる仕事なのかといったことは、就職する前の大学生が判断できるのか?ということでした。
それは、大学生には負担の重すぎる選択なのではないでしょうか。
辛くてもその会社でしか働くことができないというように追い込まれてしまうと、過労死や仕事でのストレスからの自殺といった悲しい出来事が起こってしまいます。
仕事も大切かもしれませんが、それ以上にその方自身の命や人生そのもののほうが大切です。
転職するというオプションは常に持っているという意識で逃げ道を作っておいて仕事をするほうが追い込まれずに済みます。
私は4社経験しましたが、会社によって社風が全く違いますので、たとえ一つの会社が合わなかったとしても、ほかの会社では評価される人材になるということも十分あり得ると感じました。
もちろん、大卒で就職した会社が自分に合っているのであれば、それは素晴らしいことですし、定年まで勤め上げる価値はあるでしょう。
ただ、実際に入社してみて「合わなかった」と感じたのであれば、転職したって良いのです。
会社を卒業するという意識
会社を転職すると、仕事の仕方や同僚の持っているスキルがガラリと変わります。
自分の知らないことが同僚たちにとっては誰でも知っている当たり前のことということは少なくありません。
未知との遭遇ですので、慣れるまで辛く感じることもあるでしょう。
私も転職するたびに、最低でも六か月間は適応に苦しみました。
ただし、それを乗り越えるとスキルがアップします。
しかし、入社して2年くらい経つと学ぶことが少なくなり、自分の成長が鈍化していると感じてきます。
3年間が経つと2年目と比較して伸び幅がかなり低くなります。
そこで、湧き上がってくるのが「卒業」です。
学ぶことは学び、会社に一定の貢献ができたのであれば、ここで「卒業」して次へ進もうということです。
もちろん、大企業であれば、異動や昇格によってある種の「卒業」ができるので、成長の機会を逃すことなく、成長し続けられる方はいるでしょう。
ただ、私の場合は「税理士」であることが中心であり、その枠からはみ出す人事異動は避けたかったので、選ぶ選択肢は転職でした。
そして、4社目で選んだ「卒業」後の選択肢が「独立」でした。
では、「独立」に卒業はあるのでしょうか。
まだ独立して1年半の私には全く見えていませんが、人生の卒業(つまり、「死」)があるわけですから、いつかは卒業しなくてはいけないのでしょう。
ただ、選択肢が無数にある「独立」ですから、「卒業」しなくても成長できるものと考えています。
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【編集後記】
卒業の季節になりました。
私にとって卒業ソングで真っ先に思い浮かぶのが尾崎豊の「卒業」です。
「あと何度自分自身 卒業すれば 本当の自分に たどりつけるだろう」
尾崎豊の「卒業」の歌詞を読んでみると、なんだか「卒業」を美化して浮かれていいものなのだろうかという気持ちになってきました…。
「卒業」というアメに踊らされているのではないかと。
私自身は、中高生の頃の尾崎豊の歌詞は強く心に響きましたが、今の中高生はどうなのでしょう?
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