「林君、若いんだから税理士のほかに社会保険労務士でもとったらどう?」
こんなアドバイスをいただくことがあります。
独立して開業して事業を拡大しているための一つの選択肢として、業務の幅を広げるということが考えられます。
税理士に加えて社会保険労務士の資格も取れば、税理士業務のほかにも社会保険の手続や労務相談、人事系の補助金の申請など、お客様へ提供できるサービスの幅が広がります。
お客様にとっても事業が拡大していく過程で税理士のほかに社会保険労務士が必要になったとき、別途、社会保険労務士を探すことなく、私へ追加で社会保険労務士業務をご依頼いただくことで賄うことができます。
しかし、私は社会保険労務士の資格を取得することを目指しておらず、今後も目指すことはないでしょう(気が変わらない限り)。
執筆の仕事やセミナーの仕事など、書く仕事や話す仕事を増やしていくことは目指していますが、士業としての仕事は税理士のみ続けていく予定であり、社会保険労務士、司法書士、行政書士などの領域に足を踏み入れるつもりはありません(ダブルライセンスは取得するのも大変ですし、実務で2以上の士業の専門領域を取り扱うというのは凄いことだとは思います。ダブルライセンスの方、2以上の士業の業務を行っている方は尊敬しています)。
名刺、ホームページ等でのダブルライセンスによるアピール
税理士として独立するほとんどの税理士は、名刺、ホームページ、ブログなどの自己紹介欄に保有資格を書きます。
私であれば、
税理士 林 義章
といったように。
社会保険労務士や行政書士などの資格を取れば、
- 税理士・社会保険労務士
- 税理士・行政書士
といったように、複数の国家資格の肩書を書くことで、より幅広い業務に対応できることがアピールできます。
どの国家資格がどのような仕事をしているかを存じていない方からみても、なんとなく凄そうってみてもらえるかもしれません。
税理士は公認会計士や弁護士の資格を保有していると容易に税理士登録が可能となります。
そこで、税理士登録をすると、
- 公認会計士・税理士
- 弁護士・税理士
といったように名刺やホームページで記載できるようになります。
幅広く仕事をすることができる
税理士の仕事は、規模の小さい個人事業主の方から大規模法人までカバーする仕事です。特に、1人で仕事をしている個人事業主や法人ともかかわりがありますので、中小零細企業の方にとっては最も身近な資格と言えるでしょう。
しかし、中小零細企業の方が必要とするすべての士業の仕事を税理士が行うことができるわけではありません。
株式会社や合同会社などの法人を設立するときには登記が必要ですが、登記の代行は司法書士の独占業務であり、税理士は行うことができません。
従業員を採用した時に必要となる社会保険の手続の代行は、社会保険労務士の独占業務です。
許認可手続などの行政の手続については行政書士の独占業務です。
コロナ禍で持続化給付金の申請が必要な時、税理士はそのサポートを行うことができますが、代行はできません。持続化給付金の申請は行政手続きですので、代行を行うとなると行政書士としての登録が必要です。
このように、税理士だけだと中小零細企業に必要な手続をすべてカバーすることはできませんので、このような時には別の士業の方を紹介するなどしてお客様に必要な手続を代行してもらうことになります。
もし税理士がダブルライセンスをとることができれば、お客様の手続代行できる範囲が広がり、より多くの収入を得ることができるでしょう。
ダブルライセンスを目指さない理由
ダブルライセンスにより名刺やホームページでのアピールや業務範囲の拡大による収入の増加が見込まれますが、私はダブルライセンスを目指していません。
目指していない理由は、主に下記の通りです。
- 資格取得のための勉強が大変すぎる
- 税理士の業務範囲が広すぎる
- ゼネラリストよりもスペシャリスト
資格取得のための勉強が大変すぎる
士業の資格は、資格試験に合格するのが大変です。
私が取得した税理士の場合、科目合格制で会計科目2科目、税法科目3科目(うち1つは法人税法、所得税法のいずれかを合格する必要あり)の合格が必要です。
1科目当たりの合格率が10%強で、それを5科目とらなければならず、私は合格するまで8年かかりました。
年1回の試験のため、毎年1年間の勉強の成果をたった1回の2時間の試験にぶつけなければならず、プレッシャーも大きいものでした。
科目合格制というのが曲者で、社会人でも仕事しながら勉強できるというので受験期間が長引きがちであり、1科目ずつ勝負しなければならないので、苦手科目を他の得意科目で補うということができず、どの科目も高い完成度での勉強ができていないと合格できません。
税理士だけでも苦労したのに、その苦労をまたするのかと思うとうんざりします。
ちなみに、上記であげた士業の合格率は以下の通りです。
社会保険労務士:約3~7%(2019年は6.6%)
司法書士:約3~4%(2019年は4.4%)
行政書士:約10%(2019年は11.5%)
※ 行政書士については、税理士の場合、試験免除で登録可
税理士の業務範囲が広すぎる
アイキャッチ画像は、税理士であればほとんどの方がもっているであろう、税法の法規集です。
その分厚さだけでもわかる通り、とてもではありませんが、すべての税法を覚えるのは不可能です。
1人の税理士が税理士業務のすべての範囲を完ぺきにこなすのは至難の業です。
そこで、同じ税理士であっても、
- 相続税に特化した税理士
- 国際税務が得意な税理士
- 税務調査に精通している税理士
- M&Aに強い税理士
といった専門分野に特化した税理士もいれば、得意な専門領域はないけれども町医者のように中小零細企業に対してオールマイティーに対応することができる税理士もいます。
多くの税理士にとっては税理士業の中であっても未知の分野が存在します。
私自身、税理士の業務領域の中でまだ手を付けていない部分があります。にもかかわらず、他の士業の領域の仕事をしようとは思えないのです。
ゼネラリストよりもスペシャリスト
もちろん、税理士の業務領域にこだわらず、ダブルライセンスをとって目の前の仕事としてとれそうな他仕業の独占業務を狙う考え方もありだと思います。
深度を深めるよりも、幅を広げてサービスを拡充していき、中小零細企業のお困りごとをワンストップサービスで提供するという方法もあるでしょう。
ただ、私は、ゼネラリストよりもスペシャリストを志向しています。食べ物でいえば、下記のようなイメージです。
- ファミレスや大衆食堂で注文するラーメンよりも、ラーメン屋のラーメン
- サイドメニューの充実した回転ずしよりも、目の前で板前さんが握ってくれる寿司
私の過去の経験から、骨を骨折した時には「胃腸外科 内科 小児科 整形外科」と看板を掲げている病院よりも「整形外科」と掲げている病院のほうが専門性の高い医者に診てもらうことができると感じています。あくまで一個人としての感想に過ぎないのですが、診療科目は得意な診療科目の順に並んでいるといわれていますので、骨折した時には「整形外科」を診療科目の一番目に掲げている病院が一番安心ができます。
独立するまで10年間、税理士業界や金融業界で仕事をしてきて、その経験をもとに税理士として独立しました。そして、その仕事だけでも現状は十分食べていくことができています(日々、時間が足らないと思うくらい…)。
そのような状況ですから、私は税理士に特化して、登記が必要であれば司法書士の方、社保や労務のことであれば社会保険労務士の方を紹介するなどして、その道のプロの方にお願いするのが自分にはあっていると考えています。
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【編集後記】
今月から東京都もGo to トラベルの対象となり、また、Go to Eatも始まり、お得に旅行や外食に行きたいと計画しています。Go to Eatはランチも対象にしているお店があり、人数×500pのポイントが付与されるとのこと。1,000円ランチだと半額で食べれている気分になりますよね。使えるのが次回というとことが残念ですが…(^▽^;)
マイナポイントは申請に苦労しました。所持しているスマホではマイナポイントアプリが対応しておらず、カードリードライタを使って申請。申請方法が面倒くさすぎます。。
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