税理士として独立して、税理士に対する不満を聞く機会が増えました。
- 大したことをやっていないのに報酬が高い
- 税理士なのに財務3表が回せない
- 顧問税理士へ相談に行ったら、相談後に報酬を請求された
- 毎月来てくれない
本当にダメな税理士だったのか、私にはわかりません。
ただ、事実なのは、ほかの人から見て「ダメな税理士に見えてしまった」ということです。
ダメではない税理士だったかもしれない
冒頭で上げた例は、これだけではダメな税理士とは言えません。
大したことをやっていないのに報酬が高い?
「大したことをやっていないのに報酬が高い」というのは、まず本当に大したことをやっていないのかということがあります。
税理士が事務所で行っている検討や作業はお客様には見えません。
条文や通達を読んで調べて、しっかり検討を行ったうえで作業をしているということがあっても、お客様にその大変さが伝わらないとただただ報酬が高いだけと思われてしまいます。
高いと思われる報酬を提示するのであれば、自分が考えている価値提供とお客様が感じるそれとが一致しないといけないのです。
税理士なのに財務3表が回せない
M&Aの案件では、アドバイザーはExcelで財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュ・フロー計算書)を作成して、事業計画の参考にするなどします。
とあるM&Aのアドバイザーの方が嘆いていたのは、「財務3表も作れない使えない税理士が多い」ということでした。
この財務3表、確かに、簿記の勉強の時の「キャッシュ・フロー計算書」の論点が出来れば大したことはないのですが、税理士がこれに直面するのは簿記論の勉強の時くらいで、実務ではほぼキャッシュフロー計算書は作成しないでしょう。
普段の業務領域以外のことが出来ないからと言ってダメな税理士とレッテル貼りされてしまうのは、困り者だなぁと思いました。
まあ、確かに難しくはないのですが(簿記論講師経験者としては、本当は出来ていてほしい)。
顧問税理士へ相談に行ったら、相談後に報酬を請求された
税理士の仕事は物を提供するわけではないので、その費やした時間分だけの人件費コストが発生し、その人件費の回収として請求を行うという性質があります。
ですので、通常の税務顧問の範囲を超えての相談であれば、別途報酬が発生するというのは、理にかなっているといえます。
しかし、事前に報酬の説明が何もなく、相談後に
「はい、今相談に乗ったので、●万円です」
と後出しじゃんけんのように報酬を提示するようでは、お客様との信頼関係を損なってしまいます。
こういうぼったくりバー的な対応は、税理士というよりも社会人としていかがなものかと思います。
毎月来てくれない
税理士の仕事は、労働集約型のビジネスです。
訪問に行けば、そこで人件費が発生し、それを回収しなければなりません。
毎月訪問するのであれば、それなりの報酬が必要ですし、訪問頻度が少なければ、報酬を下げる余地も出てくるでしょう。
私が聞いた「毎月来てくれない」という愚痴は、月額数千円の顧問料の税理士に対する愚痴でした。
そのお客様に会いに行って、話をして、事務所に戻って、書類を整理して会計ソフトに入力して、っていうことをその料金で行った場合、東京都の最低時給958円を切ってしまう可能性ありです。
ビジネスとして成り立ちませんから、そういう契約をしてしまったのであればそれ自体が判断ミスですし、契約に毎月訪問としていないのであれば説明不足です。
ダメではない税理士がダメな税理士に見えてしまう
本当はダメではない税理士だったかもしれないのに、ダメに見えてしまう可能性があるというのは、ある意味、仕方がないことなのでしょう。
税理士の業務に詳しい方が判断しているわけではありませんから、自信のないところが垣間見えたり、断言できないところがあれば、「ダメな税理士」に見えてしまう可能性があります。
税法は非常に奥が深く、きっぱりと白黒つけるのが難しいといった状況に遭遇するのは、珍しいことではありません。
例えば、役員に支給する役員退職慰労金。
法人が役員に支給する役員退職慰労金については、不相当に高額と認められる部分の金額については、経費にはならないと規定されています。
では不相当に高額と認められる部分の金額とは、いくらなのでしょうか。
退職金1億円で不相当に高額という会社もあれば、大して高額ではないという会社もあり、会社によって異なります。
そして、いくらからが高額額かという明確な規定はありません。
お客様に、
「うちの会社、役員の退任に伴って1億円の退職金を支給しようと思いますが、問題ないですよね?」
と聞かれても、すぐに「問題ないですよ」と言えないのが現実でしょう。
その会社の退職金規定がどうなっているのか、功績倍率は適正か、功労加算金の有無などの検証が必要です。
ギリギリを攻めている会社であれば、過去の裁決事例を参考に本当に大丈夫なのかの検証も必要でしょう。
お客様がそのくらい簡単なことなのでしょ?と考えていたら、そこでマゴマゴとしてしまうと、
「この税理士、ダメだわ」
と思われてしまいます。
ダメな税理士とレッテル貼りされないような振る舞いと専門家であることの自信(注:過信ではない)をもっておくことが大切です。
私が思うダメな税理士
税理士変更の引き継ぎを行って思うのは、前任の税理士が本当にダメだったとは言い切れない面があります。
お客様との相性が悪かったり、説明が不足していたり、何らかの行き違いがあったりとすることもあるのでしょう。
それは、税理士としてダメだったのではなく、ビジネスとして失敗したと私はとられています。
私が思うダメな税理士とは、そういうビジネス面の失敗ではなく、下記のような税理士です。
- お客様に脱税の指南をする
- 税制改正についていけていない
- 自分を偉いと勘違いし、上から目線
- 手書きで確定申告書を作成する
- 音信不通になる
「利益出ているから、領収書たくさん集めたほうがいいよ(「人からもらって」ということを示唆)」だとか、「この領収書だと金額が大きいから3つに分けてもらって(領収書を偽造して固定資産計上を回避)」だとか、いう税理士は税理士失格でしょう。
これが表沙汰になれば、業務停止になるでしょう。
また、税法は毎年のように改正があり、「税制改正」についていけるよう、常に勉強が必要です。
しかし、これが出来なくなってしまうと、業務に大きな支障をきたします。
高齢の税理士の方で意外といるのが、手書きで確定申告書を作成される方。
手書きで作成できること自体は素晴らしいのですが、自動計算ではないので計算ミスのリスクがあります。
私がみた手書きの確定申告書は、計算ミスがありました…。
お客様に迷惑をおかけすることになるので、今の時代、やはりパソコンで申告書作成しないとダメでしょう。
もちろん、生まれた時代が違いますので、そういった方にパソコンを使えというのは酷なのかもしれませんが。
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【編集後記】
先週から花粉症の症状で毎日目がかゆくて辛いです…。
花粉症が辛すぎて、ブログが滞ってしまっています(と言い訳)。
3月15日までは不定期、3月16日から平日毎日更新を再開したいと思います。
仕事のし過ぎはよくないですね。。
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また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。
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