公共工事の入札参加資格を得るためや取引先からの要請などの理由で資本金を増やす必要があるとき、どのような手段があるでしょうか。オーソドックスな方法としては、会社のオーナーがプライベート資金を会社に払い込む増資が挙げられるでしょう。では、会社のオーナーが増資に見合うプライベート資金を持っていないとき、または、持っていてもお金を会社に入れたくないときはどうすればよいのでしょうか。
キャッシュアウトなしで資本金を増やす方法
オーナー会社がキャッシュアウトなしで資本金を増やす方法としては、主に下記の3通りが考えられます。
- 会社の利益剰余金の資本組み入れ
会社が獲得した利益を資本に振り替える手続きであり、株主総会の普通決議(議決権のうち過半数の賛成)により、実行可能です。
- 役員の会社への貸付金を現物出資(DES)
会社からみれば、役員からの借入金を資本金とする手続きになりますので、Debt Equity Swap(デット・エクイティ・スワップ、通称「DES」)と呼ばれています。手続きとしては、通常の増資と同様の取引となることから、「株主割当て」または「第三者割当増資」のいずれかとなります。もっとも、役員からの借入金を増資に充てるということですから、一般的には「第三者割当増資」となります。
現物出資の場合には、通常の第三者割当増資の手続きに加え、検査役の調査が義務付けられています。ただし、一定の要件を満たす場合には、検査役の調査は不要となります。
※ 役員借入金1,000万円の時価は、額面金額と同様の1,000万円と仮定 - 役員の会社への貸付金を役員が回収し、その回収した現金で増資(疑似DES)
DESと同じ効果が得られる手法として、疑似DESという方法があります。これは、役員が会社への貸付金を一度回収し、その回収した資金で金銭による増資を行うという方法です。
なお、これら3つの点の税務上の留意点は、後日、記事にする予定です。結論から言えば、税金は増える方向に作用します。
キャッシュアウトなしで資本金を増やしたときの留意点
登録免許税が発生
増資した場合には、キャッシュアウトなしであっても、変更登記が必要となります。管轄の法務局にて、資本金額と発行株式数の変更と登記しましょう。その際に必要となるのが、登録免許税です。
登録免許税は、以下の通り計算します。
増資額の1,000分の7(この金額が30,000円未満の場合、30,000円)
分配可能額が減少
株主に配当することが出来る金額というのは、債権者を保護するために制限が課せされています。
大雑把に言うと、利益剰余金と資本剰余金のうち、準備金を除いた金額が配当に回すことができる金額です。
上記の「会社の利益剰余金の資本組み入れ」の例では、配当の原資となる利益剰余金が900万円から500万円に減少しています。株主からみれば、配当原資が少なくなってしまいます。DESや疑似DESの例についても、利益剰余金こそ変わりませんが、資本金が増えた影響で準備金として積み立てるべき金額が増えることになります。
※ この論点の詳細は、後日、記載できればと思います(お約束できませんが、ご要望があれば書きます)。
税務上、届出書の提出が必要
増資をした場合には、税務署や地方自治体へ異動届出書を提出しなければなりません。
まとめ
キャッシュアウトなしでの増資は、ビジネス的には入札のチャンスが拡がったり、会社の信用を高めるといった効果があります。一方、登録免許税がかかったり、配当の原資となる剰余金が減ってしまったり、会社法上の手続きや税務上の手続きが煩雑(特に、DESの場合)などのデメリットがあります。税務についても、資本金を増やすことで税金は増える方向へ作用します。
煩雑な手続きや税金の増加などのデメリットを上回る効果があるかどうかを見極めて、増資をすべきか判断するとよいでしょう。
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
【編集後記】
昨日は、お昼前に打ち合わせ。いろいろと情報交換をし、学ぶこともたくさんありました。打ち合わせ場所が自宅の近くだったため、在宅勤務をしながら、1歳の長男と遊んだり、庭の手入れをしたりといった一日でした。
【昨日の一日一新】
初めて購入した芝刈り機で庭の手入れ
------------------------------
※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。
また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。
------------------------------