会社を設立したときに、必ずと言っていいほど提出するのが青色申告承認申請書です。青色申告をしていなかったらどうなってしまうのか?まとめてみました。
青色申告とは
確定申告書などを青色の申告書で提出するのが青色申告
青色申告とは、確定申告書やこれに係る修正申告書などを青色の申告書により提出することです。確定申告書一式を見たことがある方はご存知かと思いますが、表紙の1枚目が青色になっています。会計事務所は1枚目だけ青い用紙を使って印刷するという手間をかけているのです。
電子申告の時はというと、電子データは特に青色にはなっていません。ですが、ちゃんと青色申告として認識されます。プリントアウトすると、青で印刷されてトナーを無駄遣いするということはないので、安心して印刷することができます。
私は電子申告派ですので、青い用紙は購入していません。
青色申告の要件
青色申告書を提出するためには、次の要件を満たす必要があります。
「帳簿書類を備え付けて、これにその取引を記録し、かつ、その帳簿書類を保存すること」
具体的には、以下の通りとなります。
- 資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記の原則に従って、整然と、かつ、明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行うこと
- 仕訳帳、総勘定元帳その他必要な帳簿を備え、取引に関する事項を記載すること
- 仕訳帳には、取引の発生順に、取引の年月日、内容、勘定科目及び金額を記載し、総勘定元帳にはその勘定ごとに記載の年月日、相手方勘定科目及び金額を記載すること
- 商品、製品等について棚卸表を作成すること
- 貸借対照表、損益計算書を作成すること
- 帳簿書類を7年間保存すること
1~3及び5については、会計ソフトを使用していればソフトで自動的に対応してくれます。6は、会計ソフトから仕訳帳、総勘定元帳をプリントアウトしてファイルしておけばOKです(電子データによる保存制度は現状では要件が厳しく普及していません。)。
会社を設立した時の青色申告承認申請書の提出期限
会社設立事業年度から青色申告を行うためには、会社設立の日から3月以内(3月内に決算日が到来する場合には、その決算日)に納税地の所轄税務署長へ青色申告承認申請書を提出する必要があります。
この承認申請があった場合、税務署長は、これに対して承認または却下の処分の通知をしますが、事業年度終了の日までにその通知がなかった場合には、承認があったものとみなされます。
青色申告をしていなかったらどうなる?
青色申告には、様々な特典が設けられています。青色申告をしていないと、その特典を受けることができません。その代表例を以下で紹介します。
税務調査のとき推計課税により更正される可能性がある
青色申告法人の場合、法人税の税務調査による更正処分は、帳簿書類に基づき行わなければならないと規定されています。つまり、青色申告をしていないと、税務調査官による「推計」による更正処分が行うことができるのです。「推計」ですので、法律で計算方法が決まってはおらず、合理的だと判断されればそれが処分として正当性を持ってしまいますので、想定以上の追徴課税を受けてしまうリスクがあります。
赤字が発生した事業年度の欠損金を翌年以後に使用することができない
会社設立当初から、「儲かって儲かって黒字で左うちわですよ~」っていうことは、滅多にないでしょう。ゼロから顧客を開拓していき、徐々に売り上げが伸びていくというのが通常ですから、会社設立から数年は赤字ということも多いと思います。
この赤字(欠損金)は、黒字化した時に、法人税等の計算上、その黒字と相殺することができます(青色欠損金の繰越控除)。
例:会社設立事業年度1,000万円の赤字(この赤字を繰越欠損金といいます)、2年目から400万円の黒字の場合(法人税率は15%と仮定)
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 ■スポンサードリンク | |
法人税 | 0 | 0 | 0 | 30万円 |
- 1年目
赤字1,000万円なので法人税は0 - 2年目
黒字400万円-繰越欠損金400万円=0∴ 課税なし
繰越欠損金の残高は1,000万円-400万円=600万円 - 3年目
黒字400万円-繰越欠損金400万円=0 ∴ 課税なし
繰越欠損金の残高は600万円-400万円=200万円 - 4年目
黒字400万円-繰越欠損金200万円=200万円
200万円×15%=30万円
4年間トータルの利益は200万円ですから、それに対する課税は30万円というのは理にかなっているといえるでしょう。
これに対して、青色申告をしていない場合はというと、この繰越欠損金を使用することができませんので、法人税の負担は下記の通りになります。
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | |
法人税 | 0 | 60万円 | 60万円 | 60万円 |
4年間トータルの利益200万円に対して180万円の法人税の課税となってしまいます。これ、厳しいですよね。
赤字が発生した事業年度の前事業年度の税金を取り戻すことができない
中小企業の場合、赤字が発生した前の事業年度の黒字によって生じた税金を取り戻すことが可能です。前期は400万円の黒字で法人税を60万円納めたけれども、今期は400万円の赤字となってしまったというとき、上記の青色欠損金の繰越控除に代えて、前期の法人税60万円を取り戻すことが可能です。前期と今期のトータルの利益はゼロなのだから、前期に払った法人税60万円を返してほしいという制度です。
こちらも青色申告が要件のため、青色申告をしていないとこの制度の適用を受けることができません。
従業員の雇用や給与を増やしても雇用促進税制や所得拡大促進税制の適用を受けることができない
青色申告法人は、雇用者を増やした場合や従業員の給与を増やした場合で、一定の要件を満たしているときは、雇用促進税制や所得拡大促進税制の適用を受け、法人税額を減少させることができます。
青色申告をしていない場合、この優遇措置の適用を受けることができません。
生産性向上設備等を取得しても特別償却や特別控除を受けることができない
青色申告法人は、一定の価額以上の最新設備などを購入した時、生産性向上設備投資促進税制の適用を受けて特別償却または特別控除の適用を受けることができます。
例えば、最新設備の機械装置を200万円で購入した場合、耐用年数が10年(定率法償却率0.200)であれば、1年目に経費にできる減価償却費は最大で200万円×0.200=40万円です。
生産性向上設備に該当し、特別償却を選択した場合、200万円×50%=100万円を特別償却費とし、さらに最大(200万円-100万円)×0.200=20万円を減価償却費として、設備投資をした年度に最大120万円を会社の経費とすることができます。
特別控除を選択した場合には、設備投資をした年度の減価償却費は最大で200万円×0.200=40万円で変わりませんが、200万円×4%=8万円を法人税の額から控除することができます。
青色申告をしていない場合には、この制度の適用を受けることができません。
まとめ
青色申告をしていないと、上記のような様々な税務上の特典を受けることができません。特に、設立初年度は赤字になることも少なくありませんので、その赤字の将来における有効活用の観点から、青色申告は必ず提出すべきものとなります。申請書の提出期限は会社の設立日から3月以内ですので、忘れないように注意しましょう。
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【編集後記】
昨日は契約書作成と税務相談。いつもはメールでのコンタクトが多いのですが、電話連絡の多い日で、事務所の電話で話している間に携帯電話が鳴って出れないなんてこともありました。
【一日一新】
娘2人とコピット
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