債権回収ができなかったときに貸倒損失として会社の経費とする方法~まずは回収するための努力をしよう~

税金
Maialisa / Pixabay
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会社を経営して最も憤りを感じることの一つが、代金の回収ができないことや貸したお金を返してもらえないこと。小規模事業者では、その代金の未回収が倒産につながることもあり、会社の存続を左右することも。そのような債権の未回収について、法人税の取扱いをまとめてみました。

貸倒損失として会社の経費にするための要件

貸倒損失の要件

法人税法では、法人の有する金銭債権について、次の事実が発生した場合、その金銭債権の全部または一部について、その事実が発生した事業年度に会社の経費とすることができます。

  1. 法律上の貸倒れ
    債権の全部または一部が法的手続きにより切り捨てられた場合
  2. 事実上の貸倒れ
    債権者の資産状況、支払能力等からみて全額が回収できないことが明らかとなったこと(担保物のない場合に限ります。)
  3. 形式上の貸倒れ(売掛債権の場合のみ)
    債務者との取引停止後1年以上経過したこと(担保物のない場合に限ります。)
    または
    同一地域の売掛債権の総額が取立費用に満たない場合において督促しても弁済がないこと

1の「法的手続き」とは、次のものが該当します。

  • 更生計画認可の決定または更生計画認可の決定による切捨て
  • 特別清算に係る協定の認可の決定による切捨て
  • 関係者の協議決定による切捨て(債権者集会の協議決定、行政機関、金融機関などのあっせんによる当事者間の協議などによるもの)
  • 債権者に対する書面による債務免除(債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けられないと認められる場合に限ります)

貸倒れの要件はハードルが高め

以上から分かるように、法人税の貸倒れの要件は、ハードルが高めです。

とくに、法律上の貸倒れや事実上の貸倒れはなかなか使いづらいものです。

法律上の貸倒れでは、「債権者に対する書面による債務免除」が比較的採用しやすいものの、そもそも債務免除なんかしたくないですよね。

そして、渋々債務免除をしたとしても、それが法人税法上、経費とすることができるのは、「債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その弁済を受けられないと認められる場合」のみです。いやいや債務免除したのに、税務調査のときに調査官から「弁済の見込みがある」と指導を受けてしまい、貸倒損失が否認されるってことになったら、踏んだり蹴ったりです。

「事実上の貸倒れ」については、「全額」の回収不能が要件となっています。「一部」は回収可能ということであれば、貸倒引当金の設定により、会社の経費にすることとなります。

形式上の貸倒れが一番使いやすい

商品の販売やサービスの提供などの売上などで発生する売掛債権については、その金額の規模などから、「法律上の貸倒れ」や「事実上の貸倒れ」の要件を満たさないと貸倒損失が認められないというのは、酷です。そこで、売掛債権についてのみ、「取引停止後1年以上の経過」や「取立費用」との兼ね合いで、貸倒損失とすることが認められています。

なお、帳簿上はここで貸倒損失としても、法律上は債権として存続しますので、引き続き債権の督促はしましょう。「法律上の貸倒れ」や「事実上の貸倒れ」とは違い、債務者が資力を喪失したとは限らないので、払うべきものを払わないという姿勢は許したくはないものです。もっとも、今後、二度と関りを持ちたくないから督促で接触するのすら嫌だという気持ちはわかりますので、何とも言えませんが。

経理要件

法律上の貸倒れの場合、経理要件はなく、たとえ会計上貸倒損失を計上していなくても、会社の経費として損金とすることが可能です。

しかし、事実上の貸倒れや形式上の貸倒れの場合、会計上貸倒損失として損失計上することが必要になります。

形式上の貸倒れの場合、備忘価額1円を帳簿価額として残す必要がありますので、売掛債権の金額が10万円の場合、99,999円が損金(会社の経費)となります。

貸倒損失が認められなかった場合

税務調査が入って、貸倒損失が認められなかった場合、どうなるのでしょうか。

例えば、書面による債権放棄を行ったが、債務者には弁済能力があったと認定された場合、寄附金として取り扱われます。

この場合の寄附金は、一定の損金算入限度額を超える部分の金額は損金(会社の経費)にすることができません。

まとめ

憎き債権の未回収ですが、貸倒損失として会社の経費にすることも可能です。ただ、税法上の要件が厳しいので、その要件を満たしているかどうかは注意が必要です。回収の意思がなかったと指摘され、寄附金認定されるのは避けたいところですので、債権回収の努力はしましょう。そして、その債権回収のための督促の証拠は残しておくべきです。

また、貸し倒れた営業債権のうち消費税部分は、消費税確定申告で取り戻すことが可能です。

ホント、嫌な気持ちにさせられる未回収の債権ですが、たとえ回収できなくても、せめて節税には貢献してもらいたいものです。

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【編集後記】

昨日は、前職の同僚とランチ。そして、夕方はお客様と打ち合わせ。

【昨日の一日一新】

自宅で喉黒の煮付け

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※この記事は、投稿日現在の状況、法令に基づいて書いています。

また、ブログの内容等に関する質問は、受け付けておりませんのでご了承ください。

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